認知症外来/もの忘れ外来
認知症とは、脳の機能低下により、認知(認識・思考・記憶)に障害を起こす病気の総称です。高齢者に多い病気ですが、若年者でも発症することがあります。国内の認知症患者は700万人を超えるとされております。よって「なってもおかしくない」疾患として認識し、予防や早期発見に努める必要があります。下記が認知症でよく見られる症状ですので、少しでも当てはまるようでしたら、ご受診をお勧めしております。
- 記憶障害:最近の出来事や人との出会いを覚えていない、同じ話を何度も繰り返す、時間や場所がわからない、予約や約束を忘れるなど。
- 言語障害:単語を思い出せない、言葉が出てこない、正しい言葉を使えない、人の話が理解できない、文章を読めないなど。
- 空間認知障害:ものの位置を把握できない、道に迷う、家の中でも迷子になる、物を紛失する、物の使い方が分からないなど。
- 判断力障害:現実的な問題に対して適切な判断ができない、詐欺や巧妙な言いくるめに騙されやすい、自分の身の安全を守るための判断ができないなど。
- 行動障害:身だしなみに気を使わない、食事のマナーが悪い、物の取り扱いが荒い、感情のコントロールができない、不適切な行動を繰り返すなど。
- 社会生活障害:家族や友人との付き合い方がわからなくなる、社交的な場に馴染めなくなる、家族に依存してしまう、家族や介護者に当たり散らすなど。
認知症には、中核症状と呼ばれる記憶力の低下や言葉の理解困難、判断力の低下などがあります。また、BPSDと呼ばれる行動・心理症状も現れることがあります。早期発見・早期対応が大切であり、認知症にかかる前段階であるMCI(軽度認知障害)の症状にも注目する必要があります。
認知症の主な原因としては、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症などがあります。しかし、病名によって症状や進行度合いは異なります。
認知症は早期診断・治療が重要です。認知症検査を受けることで、認知症の初期段階であれば、治療や予防が可能師です。認知症の治療法としては、薬物療法、言語聴覚療法、リハビリテーション、社会復帰支援などがあります。また、患者さんとご家族、医師、看護師、公認心理師、作業療法士、理学療法士など、多職種でチームを組んで、継続的なサポートが必要です。
当院では、神経内科専門医、認知症サポート医、公認心理師による認知症専門外来を行っております。また、介護が難しくなった方には認知症に対応した介護施設(有料老人ホームやデイサービスなど)も併設しておりますので、患者さんの生活までトータルで支援を行います。
公認心理師による認知症サポート外来
当院では、公認心理士による認知機能検査、認知症相談、自宅で出来る認知作業療法の教育などを行っております。
医師に相談しにくい内容や医師の診察のみでは時間的に不十分と感じる方など、お気軽にご活用ください。
認知症の検査
長谷川式認知症スケール(HDS-R:Hasegawa Dementia Scale-Revised)
HDS-Rは、日常生活で必要な認知機能の状態を評価することを目的としています。検査時間は約10分で、20個の質問項目があります。HDS-Rは、従来のHDS(Hasegawa Dementia Scale)を改訂したもので、より正確に認知症の診断ができるようになっています。
HDS-Rは、複数の認知領域を評価することができ、検査項目は、記憶、言語、知覚、計算、抽象思考、指示、空間認知などです。例えば、患者さんに10個の単語を読み上げてもらい、その後、別の作業を行った後に、患者さんが記憶している単語を尋ねたり、描かれた時計の針の位置を答えさせたりすることがあります。
HDS-Rの得点は、30点満点中の得点で評価されます。得点が20点以下の場合は、認知症の可能性が高く、診断のためにさらに詳細な検査が必要となることがあります。
MMSE(Mini-Mental State Examination)
MMSE(Mini-Mental State Examination)は、認知症の程度を評価するための簡易的な検査です。 MMSEは、30点満点で、30点が正常値であるとされています。以下にMMSEの主な検査項目とその内容を具体的に説明します。
時間の問い:現在の年月日を尋ねます。
地理の問い:現在地を尋ねます。
三単語再生:3つの単語を患者さんに伝え、暗唱してもらい、数分後にそれを再度言ってもらいます。
逆算:数字を逆から数えてもらいます。
注意力と計算:簡単な計算問題を出し、正確に解答できるか確認します。
記憶:伝えた単語を思い出してもらい、再度言ってもらいます。
言語理解:簡単な指示を与え、それを理解できるか確認します。
言語表現:物を指して、それについて説明してもらいます。
MOCA(Montreal Cognitive Assessment)
認知症の早期発見や評価に使用される検査です。MOCAでは次のようなチェックを行います。
記憶: 数字や単語のリストを読み上げられた後、患者にそれらを思い出してもらいます。例えば、3つの単語(りんご、テーブル、喜び)を覚えてもらい、後で再び尋ねられます。
注目と集中: 患者に、指示に従って指定された文字を書いたり、図形をつないだりするように求められます。これにより、患者の注目や集中力を評価します。
言語能力: 患者に単語を言ったり、言葉の意味を説明したり、文章を書いたりしてもらいます。また、文章を読んで理解する課題も含まれます。
空間と実行機能: 患者に、特定の図形の一部を模写したり、時計の針を設定したりするように求められます。これにより、空間的な認識や計画・実行能力を評価します。
認識と思考: 患者に、特定の図形や絵を認識したり、物の関係性を理解したりするように求められます。例えば、「これは何ですか?」や「これらのものはどう関連していますか?」といった質問があります。
精神状態評価: 患者に、自分の現在の状態や感情について質問されます。また、特定のシナリオに基づいて意味のある判断を行うように求められることもあります。
MOCAは、これらの項目を組み合わせて総合的な認知機能を評価します。それぞれの項目には得点が割り当てられ、総合スコアが算出されます。通常、30点満点中の26点以上を正常範囲と見なします。
(長谷川式認知症スケール 日本老年医学会より抜粋)