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脳神経内科的視点で見た不眠障害と不眠障害アプリの可能性

不眠障害とは、寝つきが悪かったり、途中で目が覚めたり、早く目が覚めてしまったりと、質の悪い睡眠を繰り返す症状のことを指します。不眠症は、人々の生活に悪影響を及ぼし、日常のパフォーマンスや身体的な健康に悪影響を与える可能性があります。

厚生労働省の発表によると、一般成人の30〜40%には何らかの不眠症状があり、そのうち慢性不眠症は成人の約10%に見られるということです。どちらかというと女性に多いようです。
不眠症の原因はストレス、精神疾患、神経疾患、アルコール、薬剤の副作用など多岐にわたり、加齢とともに増加します。60歳以上では半数以上の方で不眠症状が認められます。つまり、国民病といっても過言ではない身近な病気なのです。

神経内科でよくみられる不眠症の原因

脳神経内科でも不眠症の患者さんは多く、セカンドオピニオンでいらっしゃる方も多いです。不眠症の原因は様々ですので、内科的検査や神経学的検査により原因を特定していきます。

脳卒中後遺症

脳卒中後遺症には、不眠症の症状が見られることがあります。治療には、薬物療法や認知行動療法のほか、脳卒中後遺症に合わせたリハビリテーションが行われます。

不安障害

不安障害は、日常生活において、過剰な不安や心配、恐怖感が継続的に現れる病気です。治療には、薬物療法や認知行動療法があります。

抑うつ病

抑うつ病は、気分が長期間低下したり、活動的になることが困難になる病気です。治療には、抗うつ薬や認知行動療法が行われます。

アルコール依存症

アルコール依存症には、睡眠障害が見られることがあります。治療には、アルコール依存症自体の治療のほか、睡眠障害に対する薬物療法や認知行動療法が行われます。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に一時的に呼吸が止まったり、浅くなったりする症状です。原因は、上気道の筋肉の緩みや脂肪の蓄積などが考えられます。検査では、多チャンネル睡眠検査(PSG)が行われ、CPAPという機器を使って治療します。

不眠症治療用アプリの可能性

先日、サスメド社(SUSMED)が開発する不眠症の治療用のアプリがPMDAでの医療機器認証がされたというニュースがありました。

不眠障害治療において患者と医師を支援するアプリの医療機器製造販売承認取得について

<概要>
販売名      :サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ
一般的名称    :不眠障害用プログラム
承認番号     :30500BZX00033000
使用目的又は効果 :不眠障害の治療において、医師が行う認知行動療法の支援を行う
承認年月日    :2023年2月15日
製造販売業者   :サスメド株式会社

先に挙げたように、不眠症の原因となる病気の多くに認知行動療法が有効とされています。
認知行動療法とは、心理療法の一種であり、思考と行動を変えることによって、問題を解決しようとする治療のアプローチです。この療法は、特にうつ病、不安症、摂食障害、パニック障害、PTSDなどの治療に有効ですが、認知障害や認知症の治療にも応用されることがあります。
認知行動療法は、人が症状を引き起こす考え方(認知)や行動に焦点を当てます。具体的には、負の思考や思い込み、自己否定的な思考、過度の心配や不安、または無駄な行動を特定し、それらを前向きな考え方や建設的な行動に変えることを目的としています。
認知行動療法はエビデンスのある治療法として広く知られています。

不眠症治療用のアプリはこの認知行動療法に基づいたものと記載がありますのでおそらく次のような機能が付いてくるものと考えられます。

■睡眠の記録機能
寝つきの時間、目覚めた時間、途中で目が覚めた回数や時間など、睡眠に関するデータ入力
データから、睡眠の質や量を分析し、改善点を提案

■睡眠習慣のアドバイスや教育の機能
良い睡眠習慣を身につけるためのアドバイスや、リラックスするためのストレッチや呼吸法などの教育コンテンツ
不眠症の原因となるストレスや不安を軽減するためのアドバイス

■睡眠状態のモニタリング機能
各種センサーやIoTデバイスと連携して、睡眠状態をモニタリング
睡眠の深さや浅さ、動きの多寡などを解析し、改善点を提案

■睡眠導入剤の使用管理機能
薬の使用状況(用法容量など)管理や服薬アドヒアランス(医師に言われたとおりに薬を使用する)を向上させる機能
睡眠導入剤は、副作用のリスクがあるため、適切な使用方法の教育

■オンライン相談機能
何か相談事があったときのためのビデオチャットやテキストチャット

 

 

 

 

 

 

 

 

 

診察時にさまざまな認知行動療法のアドバイスは行えますが、患者さんが自宅に帰った後でも、医師に変わって患者さんのスマホ(スマートフォン)のアプリからアドバイスが継続されるというのは治療に役立つでしょう。
このように治療用アプリという新しい技術で患者さんの治療効果を高められるというのはありがたいことです。現在はニコチン依存症(禁煙治療)や高血圧の治療用アプリが発売されておりますし、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)やアルコール依存症などを対象としたアプリも開発中のようなので今後が楽しみです。

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